外国人の雇用をする際には必要な手続きがいくつかあり、実際に企業で働き出すまでに場合によっては数ヶ月かかります。採用前に知っておくべき在留資格やビザ申請の方法、受け入れまでの手続きや必要書類について、2020年4月現在の最新情報をまとめています。
外国人を雇用するには – 日本の外国人受け入れ法案
外国人労働者の受け入れのために「改正出入国管理法」が2019年4月1日から施行されました。初めて外国人を雇い入れることを考えている企業は、必要書類を揃え手続きをしていくことになります。日本で外国人を雇用するには何が必要条件なのか、スムーズに雇用手続きを進められるよう見ていきましょう。
まず、外国人を雇用したいポジションが、「就労が認められる在留資格」にリスアップされている職種に当てはまるかを確認します。
就労が認められる在留資格:外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興業、技能、技能実習 (詳しくは在留資格一覧表を確認)
または、日本人と結婚している外国人などの「日本人の配偶者等」、「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」の在留資格の場合は就労(職種)に制限はないとされています。
在留資格の中でも「留学」「研修」「家族滞在」「文化活動」「短期滞在」で在留している外国人は、資格外活動許可(在留資格に属さない収入を伴う事業を運営する活動、または報酬を受ける活動を行うこと。詳細はこちら)を受けていない限り、就労できないので注意しましょう。資格は変更手続きができますので、申請方法は次の項で説明しています。
手続きは、雇い入れたい外国人が「すでに日本に在留している外国人」か「海外にいる外国人を日本で雇いたい」場合、それぞれ必要書類も異なってきますので、次に詳しく解説していきます。
外国人雇用の手続きに必要な書類一覧
申請の手続き前に、雇用主と採用する人の間で契約書を作成しましょう。「雇用契約書」の内容が、申請しようとする在留資格の審査基準を満たす必要がありますので、地位や報酬、活動内容、期間などの詳細がわかるように作成します。働き始めてからトラブルにならないよう契約書は大切です。詳しい書き方は厚生労働省「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を参照ください。
外国人がすでに日本国内にいて在留資格を所有している場合
日本に3ヶ月以上滞在している外国人は在留資格を持っているはずです。すでに在留資格を持っている外国人を採用する場合には、働いてもらいたい仕事の内容が在留資格の範囲に合っているか、在留期間を過ぎていないかをチェックします。
必要な書類:在留カード
チェックポイント
・在留カードの就労制限の有無に「就労不可」と書いてないか
・所有している在留資格の範囲と仕事内容が合っているか
・在留期間が切れていないか
雇用対策法より、外国人を雇い入れる場合「外国人雇用状況の届出」で氏名、在留資格などをハローワークに提出が必須です。ハローワークへの届出をしていなかったり、虚偽の届出をしていた場合「30万円以下の罰金」の処罰の対象となりますのでお気をつけください。ハローワークへの届出はオンラインでこちらから可能です。離職の際にも届出が必要ですので、忘れないようにしてください。
在留資格を持っていても就労資格がない場合(留学生や家族滞在など)
在留カードに就労不可と記載されている場合、その在日外国人を採用するには「在留資格変更許可申請」 が必要です。「留学」「研修」「家族滞在」「文化活動」「短期滞在」の在留許可で滞在していて資格外活動許可を受けていない人です。
「在留資格変更許可申請」 は、外国人本人が申請するか、地方入国管理局長から申請取次の承認と本人から依頼を両方受けた、所属機関の職員が申請を「取次者」として行うことが可能です。
在留資格変更許可申請に必要な書類
・申請書(法務省のダウンロードページ)
・写真(規定サイズ)
・日本での活動内容に応じた資料
・在留カード
・旅券又は在留資格証明書を提示
提出先:地方出入国在留管理官署
申請から取得までの期間:2週間~1ヶ月
ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」(こちらから)
国外から外国人を呼び寄せて雇い入れる場合
就労可能な在留資格を取得するためには、採用して実際に働いてもらう内容と申請する「就労が認められる在留資格」に相違がないよう、本人のこれまでの職歴や学歴を正確に確認することが大切です。
「在留資格認定証明書交付申請」は外国人本人が行うか,外国人を受け入れようとする機関の職員が取り次いで行うことが可能です。
例:本人が国外にいる場合
代理人が「在留資格認定証明書交付申請」を行う
↓
在留資格認定証明書が交付され、代理人へ送付される
↓
在留資格認定証明書を本人へ送付
↓
本人が在外日本公館にて在留資格認定証明書を提示してビザ申請
↓
在外日本公館にてビザ発給
↓
日本入国:到着空港にてビザを提示、在留資格認定証明書を提出し、旅券に上陸許可の証印を受けるとともに在留カードの交付を受ける (参照:日本貿易振興機構「在留資格認定証明書取得からビザ取得までの流れ」)
在留資格認定証明書交付申請に必要な書類
・在留資格認定証明書交付申請書(法務省のダウンロードページ)
・身元保証書
・質問書
・申立書
・外国人患者に係る受入れ証明書
提出先:地方出入国在留管理官署
申請から取得までの期間:1ヶ月~3ヶ月
「在留資格認定証明書」は有効期間が3ヶ月です。日本入国後に、法務省入国管理局から「在留資格認定証明書」に記載された在留資格が付与される、という流れです。
ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」(こちらから)
外国人労働者雇い入れに役立つサービス
外国人を雇用する際には様々な手続きが伴い、時間も労力もかかります。効率的に進めるために相談できるサービスや、導入すると便利なサービスなどを活用するのもおすすめです。
外国人労働者の雇用についての相談:外国人雇用管理アドバイザー
外国人労働者の雇用管理や職業生活上の問題等について相談でき、支援を受けることが可能です。申し込みはハローワークで無料です。
外国人の在留資格取得の可能性を診断できるサービス:Work Visa
採用コストをかける前に、在留資格が降りるかチェックできるのが便利。申請理由書が自動作成できる、就労ビザ申請が得意な行政書士を検索依頼できる、などのサービスを提供。
ビザ取得と管理をデジタル化するサービス:One Visa
外国人を雇い入れる際の申請書類を自動で作成でき、チャットサポートで質問や相談ができるのが特徴。
在留資格・在留期限管理のクラウド型管理システム:Smart Visa
在留資格コンサルティング、申請書類作成、在留期限管理、更新申請書自動作成などのサービスを提供。
外国人労働者の受け入れでも利用できる助成金
外国人を受け入れることに対する直接的な助成金というものはないのですが、厚生労働省が設定している様々な助成金制度の中で、外国人雇用にも活用できる助成金制度があります。
受給条件を満たせば適用対象になり申請できますので、それぞれ詳細をご確認ください。
・人材確保等支援助成金 - 働き方改革に取り組む上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を図る場合に助成されます。(詳しくは厚生労働省「人材確保等支援助成金」)
・人材開発支援助成金 – 雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識及び技能を修得させるための職業訓練等を受講させる事業主等に対して助成する制度です。(詳しくは厚生労働省「人材開発支援助成金」)
・トライアル雇用助成金 – 安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に助成する制度です。(詳細はこちら)
・雇用調整助成金 – 労働者の休業・教育実習・出向で利用可能。労働者の失業の予防を目的とした制度です。(詳しくは厚生労働省「雇用調整助成金」)
・中小企業緊急雇用安定助成金 – 雇用調整助成金の条件を、中小企業が申請しやすいように変更した制度.。
・キャリアアップ助成金 – 有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための取り組みを実施した事業者に助成される制度。(詳しくはキャリアアップ助成金のご案内をご覧ください)
外国人受け入れのメリット&デメリット
ここまで外国人を雇い入れるための手続きや制度を見てきましたが、やることがたくさん、手間が多く感じて、読んでいるだけでも少しぐったりした気持ちになるかもしれません。
手続きに手間と時間をかけても、いま外国人を雇い入れ始めることが企業にとって何がメリットなのか、ここで改めて確認し、合わせて雇用時の注意点も見ていきましょう。
外国人受け入れのメリット
- 人材不足の解消・若い労働力の確保
- 社内のグローバル化により新しい視点が生まれる
- 社内環境の活性化、刺激が得られる
- 企業の「多様性への対応促進」アピール
- 海外進出の足掛かりができる
日本の労働人口(15〜64歳まで)の減少は急速です。日本の抱える高齢化、少子化問題によって働き手が減っている明白なことと言えます。内閣府の資料でも「生産年齢人口は1997年を境に減少が続いており、他の先進国と比べて減少傾向が顕著である。」と生産年齢人口等の推移について示されています。
一方で、有効求人倍率はここ10年急速に増加し続けているのです。求人はあるのに人手不足、外国人の雇い入れに企業が動き出すのは必然的なことでしょう。
外国人受け入れのデメリット
- 文化や習慣の違い(生活習慣や価値観など)に戸惑う
- 言葉の壁により誤解が生じたり、指示が伝わらない
- 受け入れの体制が整っていない
- 申請や労務に時間がかかる
日本的な「空気を読む」「あうんの呼吸」など、言わなくても相手も分かるだろう、という考えに頼っていると、「なんでこれやってくれないんだろう?」と一方的に誤解して、不満に思うことも起こりえます。
明確に伝え合う、わかりあおうとする努力が重要です。お礼を言う、謝罪する、という基本的なことでも、文化が違えば表現の仕方など日本人が思うものとは異なることがあります。また、日本式の研修やマニュアルをそのまま使用しても、期待した効果を得られない可能性もあるでしょう。
今までの自分の「当たり前」の価値観が、当たり前ではないことがあることを冷静に客観的に受け止めることが求められます。社内意識のグローバル化が進めば、固定概念を無くして古い悪習を断ち切ったり、新しいアイデアを柔軟に取り入れられたり、良い変化がもたらされる可能性があるのではないでしょうか。国内でのさらなるビジネスの拡大や、海外進出などにも拍車がかかるかもしれません。
外国人雇用の注意点
- 手続きには時間がかかる
すでに就労可能な在留資格を持っている在日外国人の雇用の場合は手続きが少なく、すぐ働き初めてもらえるので時間はかかりません。しかし、在留資格の変更手続きには2週間~1ヶ月、海外から申請手続きをする場合は申請の結果が分かるまで1ヶ月~3ヶ月かかるため、採用の際は早めに必要書類の準備に取り掛かる必要があります。
- 労働契約書は明確に、外国人が理解できるように
外国人が理解できる母国語や英語での表記か、翻訳文を添えるなども必須です。雇用した後でトラブルにならないよう、労働計画書は賃金をはじめとした労働条件を細かく明記されているようにしましょう。日本と外国では、法律や労働慣行に違いがあるため、今までの日本の慣行でOKとはいきません。認識の違いから後々揉め事にならないよう明確にしておくよう注意しましょう。(参照:厚生労働省「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」)
- 来日してすぐサポートが必要
海外から外国人を雇い入れる場合、最初の住まいを見つけるのもサポートが必要です。そして、居住地決定後の住民登録と同時に、入国時に受け取った在留カードに住所地を裏書きしてもらう必要があります。そして、住民登録後、給与振り込みに必要な銀行口座開設をサポートしましょう。在留カード、住所や銀行口座については労務で必要になるのでスムーズに進めて管理したいところです。
まとめ
日本に在住の外国人で在留資格がマッチしている人材を雇い入れる場合は手続きが簡略ですが、在留カードの資格を変更する場合や海外から外国人を雇用する場合は手続きに数ヶ月と時間を要します。
しかしグローバル化が進むと同時に日本の少子高齢化は避けられないので、多くのメリットが享受できる外国人採用を活用しない手はないでしょう。ぜひ必要書類をしっかり用意して、スムーズに手続きを進めていってください。
外国人を雇用して最初の住まいを探される場合は、マンスリーマンションやサービスアパートメントの利用をおすすめします。サービスアパートメントは、ホテルのような設備やハウスキーピング・フロントデスクといったサービスを持つ、家具・家電つきマンションです。海外では家具・家電つきアパートが一般的な国もあり、日本に来たばかりの外国人でも生活がしやすく環境に慣れる間の助けとなるでしょう。
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