シンガポールへの駐在・赴任が決まった際にまず最初にすべきことは就労ビザの取得です。シンガポールでビジネスをする際に必要な就労ビザには大きく分けて2種類、エンプロイメントパス(EP)とSパス(S Pass)があります。
それぞれの違いや、取得するのにどのような条件・手続きが必要か見ていきましょう。
エンプロイメントパス
エンプロイメントパスは、取得するための条件が年々厳しくなっています。その背景としてシンガポール政府が現地人の雇用を守るために、2016年の1月からエンプロイメントパスの取得に必要とされる最低給与基準額を3,300ドルから3,600ドルまで引き上げたことがあります。
1.取得条件
エンプロイメントパスを取得するための条件として、月額固定給与が3,600ドル以上であること・専門職または専門性の高いポジションで就職が決まっていること・大学の学位を有していることなどが挙げられ、また、経験が豊富な場合は、より高い給与が必要とされます。
2.手続き方法
エンプロイメントパスを申請する際に必要なものは、所定の申請用紙・パスポートのコピー・就職先企業の最新事業報告書・最終学歴の卒業証明書などで、MOM(人材開発庁)サイト内の「EPオンライン」から申請が可能です。審査結果が出るまでには大体1週間程度かかるとされていますが、場合によってはそれ以上の日数を要することもあります。
審査に通るとMOMから企業にメールで通知がありますので、企業の担当者は「EPオンライン」より、In-Principle Approval letter(通称IPAレター)をダウンロードします。このIPAレターを受け、6ヶ月以内に正式にエンプロイメントパスの取得手続きを完了させます。その後、オンライン上で料金を支払い、エンプロイメントパスを発行してもらいますが、この段階ではまだカードが手元にありません。カードを入手する際は、まず企業の担当者がオンライン上でMOMと面会予約を取ります。そして、候補者は必要書類を揃えた上で指定の日時にMOMの出先機関へ行き、書類の提出と指紋の採取を行います。後日、また指定の場所へ行きエンプロイメントパスを受け取ることになります。これがエンプロイメントパスの申請から取得までの流れとなっています。
Sパス
一方、Sパスは、エンプロイメントパス(EP)取得の条件を満たさない人のために2004年に導入されました。日本語では中技能向けのパスと訳されています。4年生の大学の卒業資格を有しておらず、専門職に就労しない場合などに申請が可能です。この事から、取得者には一般事務や飲食・小売店スタッフ、美容関係などの職種の人が多いとされています。
また、Sパスを申請する企業は、政府が定めている一定数のシンガポール人の雇用が必要となります。Sパスで就労できる労働者の数は、サービス業の場合にはシンガポール人と永住権保持者の合計数の15%まで、その他の業種では20%までが限度と定められています。
1.取得条件
Sパスを取得するための条件は、月額固定給与が2,200ドル以上であること・高等専門学校以上の学歴または相応の資格を有していること・希望する職種での勤務経験が数年あることなどがあります。専門学校の場合は、最低でも全日制で1年以上就学していることが条件となっています。さらに、経験が豊富な場合、より高い給与が必要となります。
2.手続き方法
Sパスの取得に必要なものは、所定の申請書類・パスポート・就職先企業の最新事業報告書・最終学歴の卒業証明書などですが、場合によってはこれ以外の書類が必要な場合もあります。
Sパスの申請も、エンプロイメントパスと同様にオンライン上で行うことが可能です。オンライン申請後、審査に通ればIPAレターが発行され、60日以内に正式なSパス取得の手続きを完了させる必要があります。所定の場所で書類の提出と指紋採取を済ませ、後日Sパスを受け取ります。これがSパスの申請方法と発行までの流れとなっています。
加えて、IPAレターの発行後、健康診断が必要な場合があります。IPAレターに健康診断が必要か不要か明記されていますので、健康診断が必要な場合は、就労ビザ取得のための健康診断を行っている医療機関で健康診断を受けます。この際、パスポートとIPAレターに付随された健康診断表が必要です。
配偶者ビザ
また、家族が一緒に移住する場合、その家族は配偶者ビザ、DP(Dependant’s Pass)を取得する必要があります。
1.取得条件
DPは就労ビザを持つ駐在員の、配偶者と21歳以下の子ども、実の両親に発行されるビザになり、ビザの申請は雇用する企業が行うのが一般的です。
2.手続き方法
DPの申請に必要なものには、所定の申請用紙・パスポートのコピー・証明写真・戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの)などがあります。まずMOMのサイトから所定の申請用紙をダウンロードし、必要事項を記入した上で提出します。審査が通ればIPAレターが発行されますので、正式にDPの取得手続きを行い、DPの受け取りが可能です。さらに、IPAレターに健康診断が必要と明記されている場合は、健康診断を受ける必要があります。これがDPの申請から発行までの大まかな流れとなります。
なお、配偶者に必要な婚姻証明書と子どもに必要な出生証明書は、シンガポールにある日本大使館で発行手続きを行うことが可能です。
まとめ
以上の情報は2018年3月現在の情報です。ビザ取得や入国に関するルールが頻繁に変わることがあるため、必ず大使館の最新情報を確認するようにしましょう。また、必要な書類を揃える段階でも多くの時間がかかってしまうため、早めに準備しておくことが大切です。