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海外赴任中の住民票はどうするべき?検討ポイントと転出の手続き

住民票

「海外赴任中は住民票を残すか、抜いて転出届を出すのか、どっちが正解?」

海外赴任が決まってからこのように悩む方は少なくありません。
転出届を出す(=住民票を抜く)と、住民税や国民年金を払う必要がなくなるため、支出を抑えることができる反面、さまざまな公的サービスが受けられなくなります。

海外赴任が決まった方を対象に、そもそも住民票とは何か、住民票の異動手続きの仕方、住民票を抜く場合と残す場合のメリット・デメリット、住民票に関連して忘れがちな手続きなどについて説明していきます。

住民票とは

<Photo by himawariinさん  on Photo AC>

そもそも住民票とは、住民の居住関係を公に証明するもの、つまり「○○さんは△△の住民です」と証明するものです。
ですから、実際に住んでいるところに住民票を置く、というのが基本です。

ただし、完全な移住ではなく、頻繁に帰国したり、短期間で帰国したりする可能性が高い場合は、家族や親族の家、もしくは国内の持ち家に住民票を置いたままで海外に引っ越す人もいるようです。
住民票は住民税や国民年金、国民健康保険、その他の行政サービスを日本国内で受けるのに必要になる場合が多く、国内の引っ越しで住民票を「移す」の海外赴任に伴って転出届を出すのとは大きく異なります。

例えば、住民税はその年の1月1日に住民票を置いている自治体から徴収されますので、1年以上海外に居住し1月1日時点で住民票を抜いている場合、その年は原則として住民税が課税されません。

海外赴任に行く際に住民票を抜いた場合と残した場合、それぞれに生じるメリット・デメリットを説明していきます。

 

住民票を抜いて海外転出届けを出した場合のメリット・デメリット

海外赴任で転出届を出す場合のメリット・デメリットを次の3つの点から説明していきます。

  1. 国民年金
  2. 社会保険・国民健康保険
  3. 住民税

国民年金

給与の支払元が完全に日本企業でなくなる、いわゆる移籍出向や現地採用のために海外赴任する場合は、雇用形態によっては、会社の厚生年金にとどまり続けられるケースもありますが、原則として厚生年金には加入できません。
通常、厚生年金を脱退すると、国民年金に切り替えを行う必要がありますが、転出届を出せば、国民年金への加入が義務ではなくなります。任意加入として支払い続けることはできますが、年金の受給額には反映されません。
住民票を抜いた場合、国民年金の保険料である月額16,000円、年額にして20万円に近い金額が浮くことになります。

一方で、加入期間によって将来の受給額が変わってきますので、国民年金の受給額を減らしたくないと思うなら、転出していても任意で加入することは可能です。

国民年金と聞くと65歳を過ぎて受け取る老齢年金だけに目が行きがちですが、実は65歳前でも病気やケガで生活や仕事が制限されるようになった場合に受け取ることができる障害基礎年金も、年金の納付月数などの条件が設けられています。
これら年金の事情も考慮して、住民票を抜く、抜かない、国民年金に任意加入する、しないを検討しましょう。

社会保険・国民健康保険

転出届を出し、住民票抜くと国民健康保険に加入できません。保険料は払わなくてすみますが、海外滞在中や、一時帰国したときの治療や通院の費用は全額自己負担になります。

厚生年金と同様、会社で加入している社会保険が継続可能になる場合には早めに会社に相談しましょう。
海外の会社に転籍するケースでも、社会保険を任意継続できる場合があります。

民間の海外旅行保険や現地の医療保険を利用すれば、健康保険に加入するより出費を抑えつつ、十分な補償を得ることも可能かもしれません。
ただし、民間の保険ではカバーされない医療分野もあるかもしれませんので注意が必要です。

一時帰国中の補償については、海外旅行保険の特約や一時的な国民健康保険の加入などでカバーできるかもしれません。

住民票を日本に残す場合、国民健康保険は必要な書類を集められれば海外でも使用できます。
住民票を抜くかどうか迷ったら、帰国の頻度や病院にかかる予定があるかなども頭に入れておきましょう。

住民税

基本的には住民票を抜けば、住民税を払う必要がなくなります。

住民税は、毎年1月1日の時点で住民票を置いている自治体から課税されるので、住民票を抜いた翌年からは原則として非課税になります。ですから、12月中に転出すると翌年は非課税になるのに対し、1月1日以降に転出すると1年分の税金を払うことになります。

年末年始に移動する予定なら、これを踏まえて渡航のスケジュールを組むと良いでしょう。

 

国外に転出する場合の住民票の手続き方法

住民票を抜く、つまり海外に転出する際の手順と、その注意点について説明します。

手続きの場所とタイミング

現在の住民票のある市区町村の窓口で、転出届を提出します。
転出予定日の14日前から届け出が可能です。

どうしても本人が出向けない場合は、委任状とともに代理人に頼むか、郵送による届け出を実施しているところもあります。

転出届に必要になる書類

運転免許証、パスポートなどの本人確認書類が必要です。
詳細はお住まいの市区町村によって詳細が異なるので、事前に窓口か電話で確認しておくとより確実です。
マイナンバーカードや住民基本台帳カード、印鑑登録証などをお持ちの方は返納する必要があります。

注意点

記入した転出予定日を過ぎた時点で住民票がなくなるので、その時点でまだ国内にいたとしても、国民健康保険や印鑑証明(車の売却などに必要)などのサービスは受けられなくなります。

届出を忘れて出国した場合は、帰国時にパスポートの出入国スタンプなどで事実確認ができれば、後からでもさかのぼって転出することが可能です。最近では自動化ゲートになっているため、「日本国自動化ゲート利用希望者登録済」のスタンプや、直前に滞在していた国のスタンプなどで申請する場合もあります。

なお、渡航先では日本大使館か総領事館で在留届を提出する必要があります。

海外駐在が決まったらこんなことも忘れないで

<Photo by 紺色らいおんさん on Photo AC>

住民票以外にも、海外へ赴任する際に忘れがちな手続きには以下があります。

免許証の更新

海外赴任が決まったら必ず免許証の有効期限を確認しましょう。

運転免許証の更新期限を過ぎると、当然ながら免許は失効し、再取得の手続きをするまでは運転できなくなってしまいます。

更新期間に海外にいて手続きできない人のために、特例で期限前に更新を受けることができるようになっていますので、出国前や一時帰国の際に更新しておきましょう。

携帯電話の解約・休止

海外赴任後も日本の携帯番号を維持したい場合以外は、日本の携帯電話を解約しておきましょう。
もし、電話番号を維持したい方は、利用休止の手続きをすると事務手数料と月額数百円の維持費用で同じ電話番号とアドレスをとっておくことができます。

日本出張が頻繁にある場合や当面はその番号にかかってくる可能性が高い場合は格安スマホの最安プランで日本の携帯番号を維持する人もいるようです。

民間の保険会社への渡航届

民間の保険に加入している場合も、手続きが必要です。
各保険会社の案内に従って海外渡航届を提出する必要があります。
保険の引き落とし口座の再確認や、当面は保証が不要な保険の解約・中断なども検討しましょう。

証券会社への届け出

海外に移住すると日本の証券口座を運用できなくなり、口座解約、もしくは取引が制限された状態で口座を維持することになります。

証券口座をお持ちの方は、凍結された、取引ができないなどトラブルを防ぐ意味でも、渡航前にしっかり必要な手続きを確認しておきましょう。

(日本国内で所得がある場合)納税管理人などの準備

非居住者であっても、国内で一定額以上の不動産所得などがあれば、確定申告を行う義務があります。
海外赴任する場合、出国の日までに納税管理人を選定し、所轄する税務署に届け出なければいけません。
なお、確定申告書の作成や申請も含めて相談したい場合は税理士に依頼をするのが確実でしょう。

まとめ

海外赴任が決まり、長期で海外生活をする場合は、転出届を出して住民票を抜くケースが多いようです。
年金や保険料を払わなくてすむ一方で、日本国内で対応できなくなることも出てくるので、帰国の頻度や任期、家族が帰国する可能性があるかなども含めて検討してみましょう。

海外赴任の前にしなければいけない手続きはたくさんありますが、事前に調査、相談しておくことで海外赴任中も安心して暮らすことができるでしょう。

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