今、新しい暮らし方の一つとして、デュアルライフ(二拠点生活)が注目されています。

2019年のリクルートのトレンド予測でも、デュアルライフを送る人を指す『デュアラー』がランクインしました。これまでのような富裕層やリタイヤ世代のための別荘というよりも、新しい生活の拠点として住まいを持ち、ある程度行き来しながら暮らすというスタイルをする人がでてきているのです。

訪れた場所がとても気に入った、維持費用を押さえつつ住める物件が見つかった、自分だけの時間がほしい、などデュアルライフを始めるきっかけは様々ですが、やってみようという意思があれば、気軽にチャレンジできるような時代になりました。

今回はそんなデュアルライフを取り巻く環境についてみていきたいと思います。
デュアルライフ_地方の風景
<Photo by KatieKatikoさん on Photo AC>

デュアルライフとは

デュアルライフとは、東京と地方、時には日本と海外など2つの拠点で暮らすライフスタイルのこと。例えば週3日は都心のオフィスに出向き、残りの4日はシェアオフィスや自宅でリモートワークをしたり、自然豊かな場所でアウトドアを楽しんだりと、それぞれの地の利を生かし、ユニークな生活を送る人が増えています。

デュアルライフと言うとこれまでは、高級リゾート地に別荘を持って休暇の間を過ごす富裕層や、リタイヤ層が老後の余暇を過ごすためのものというイメージがあったかもしれません。

ところが最近では、20~30代のビジネスパーソンや、若いファミリー層にもデュアルライフが広まり始めているのです。

二拠点での生活を目指すだけでなく、本格的な移住を目指す前の「プチ移住」としてデュアルライフを送っている人もいます。

 

デュアルライフ_都会暮らし

デュアルライフがなぜ注目されているか?

なぜ、今デュアルライフが、これほど注目されているのでしょうか。

大きく分けると4つの理由がありそうです。

・都心回帰とその反動
・働き方の多様化
・住宅の持ち方が多様化
・日本では国や自治体が空き家活用に積極的

都心回帰とその反動

高度経済成長期~バブル期には、子育てを考える年齢で郊外のニュータウンや住宅地に住宅を購入し、都心に通勤するというスタイルが一般的でした。しかし、都心の地価が下落したこともあり、共働き夫婦の増加や自身のキャリアアップ、子どもの学校などのために、利便性を重視して再び都心に暮らす人はむしろ増えています。

一方でそういった都会の生活を送る人たちの中でも、同じ地域で暮らす人や共通の趣味を持つ人たちとのつながりを築けるコミュニティや、東京にはないアクティビティを楽しめる暮らしへの需要も高まっていて、そういった新しい環境を求めて地方や海外でデュアルライフを送るきっかけにもなっています。

働き方の多様化

二拠点生活の大きなハードルの1つは、仕事でしょう。総務省の調査によれば平成29年の時点で約3割の企業が在宅での勤務を許可しており、テレワークやリモートワークを認める会社が増えてきています。固定のオフィスを持たず、オンラインのチャットやビデオツールのみでコミュニケーションをとる企業はまだ多くはありませんが、働き方改革推進の影響もあり、柔軟に働ける会社が増えてきました。

これまでは経営者やフリーランスのような人しか難しかったデュアルライフが、働く場所にとらわれずに仕事をする人が増えたことで、広まってきたともいえるでしょう。

住宅の持ち方が多様化

かつては何年もローンを組んでマンションを購入し、一生その家で過ごすという人も多くいましたが、ここ数年で圧倒的に住まいの選択の幅が広まっています。

2018年には民泊にまつわる法律が整備されてAirbnbのような予約プラットフォームが台頭し、家の貸し借りが柔軟にできるようになったのをはじめ、マンスリーマンションやウィークリーマンション、サービスアパートメントのように数週間から数か月単位で借りられる物件もここ数年で一層増えました。

また、かつては地元の不動産屋しか知らなかったような古民家や土地付きの地方の物件がオンラインで簡単に探せるようなサイトや、シェアハウスやホステルに泊まり放題のサブスクリプションサービスも人気がでてきています。

このように、泊まる、借りる、貸す、買う、売ることが、より自由にできるようになってきました。

その結果、ライフステージや住居の目的に応じて住まいの形を変えていくことが可能になり、かつては相応の資金がなければ難しかったデュアルライフが実現しやすくなっています。

日本では国や自治体が空き家活用に積極的

国や地方自治体が空き家活用の推進に力を入れていることも、デュアルライフを支えている要因のひとつです。自治体によっては移動のための資金や破格の住宅を提供するなど、手厚いサポートをしているところも珍しくありません。

実際にデュアルライフを送っている人や移住している人を交えた交流会やイベントも都内で頻繁に開催されています。

【自治体支援の例】
起業支援金・移住支援金
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/shienkin_index.html

 

 

デュアルライフに向いている人

これまで見てきたように、地方でも仕事ができるようなシェアオフィスができたり、気軽に借りられる住まいも増えたりしたこともあり、デュアルライフを実践しやすい環境が整ってきました。

では、実際にデュアルライフをエンジョイしているのはどのような人なのでしょうか。

デュアルライフに向いている人の特性をまとめてみました。

・変化を楽しめる人

両方の拠点に何かしらの基盤がある人は別として、新しい場所で人間関係を築いたり、生活に慣れたりするのは、思ったより大変かもしれません。郷に入っては郷に従え、とは限りませんが、ある程度習慣や考え方の違いも受け入れられる余裕がある人のほうが向いているでしょう。

・移動時間が苦にならず、フットワークが軽い人

デュアルライフには二拠点間の移動がつきものです。どちらかの拠点で用事があった時にすぐ動けるようなフットワークの軽さが必要でしょう。また、移動時間の間を睡眠や仕事に活用するなど、時間を効率的に使う必要も出てきます。

・生活の中のオンとオフにメリハリをつけたい人

都心の中だけで暮らしていると、どうしてもオフがワンパターンになりがちです。静かな環境で働きたい、自分の大切な趣味を心おきなく満喫したい、都会ではできない貴重な経験を子どもたちにさせたいなど、居心地のよい場を求めて二拠点生活を始める人も多くいます。

 

デュアルライフ_もうひとつの家
Photo by acworksさん on Photo AC>

デュアルライフのメリット

デュアルライフには、以下のような5つのメリットがあります。

・オン・オフの切り替えがしやすい
・対照的な環境が刺激になる
・新たな交友関係が築ける
・新たなビジネスチャンスが生まれる
・一方の拠点を事務所として使うことも可

それぞれを説明していきます。

オン・オフの切り替えがしやすい

まったく異なる2つの環境に自分を置くことで、生活の中で明確なメリハリをつけることができます。

都内でバリバリ仕事をこなして、休日は郊外の家を別荘として活用し、趣味を思いっきり楽しむ。平日は地方で仕事のプロジェクトに参加しつつも生活の基盤は都内におく。など、その人のライフスタイルにあった過ごし方が可能です。

実際にデュアルライフを体験している人の声でも、「仕事と遊びの使い分けができてストレスがたまらない」「気分転換ができる」といった声があがっています。

対照的な環境が刺激になる

デュアルライフを送る中で、これまで知らなかった郊外・田舎の自然、海外の文化や街並みに触れることができます。

自然と都会、日本と海外などの対照的な環境を作ることで、双方のよさを体感し、自分がこれまで考えなかった発想や新しい発見に恵まれることもあるでしょう。

旅行だけでは味わえないディープな体験ができるのも、デュアルライフのメリットといえそうです。

新たな交友関係が築ける

デュアルライフによって、これまでつながりのなかった人とも関わるきっかけができます。日常のご近所づきあいはもちろん、地方自治体の中には、農業体験や伝統行事の体験を行うことができるイベントを実施していることも多くあります。

大人から子どもまで様々な世代とふれあえる環境は、都内だとなかなか実現しにくい場合もありますが、新しい場所に出向けば交友関係が広がる可能性が広がるでしょう。

出不精だった人がデュアルライフを始めたことで積極的に外出するケースもあるようです。

新たなビジネスチャンスが生まれる

デュアルライフによって、新しいビジネスチャンスをつかんでいる方もいます。デュアルライフを送る中で知り合った人から仕事の紹介を受けることもあれば、その地域の魅力を自らブログやYouTube、SNSなどで発信し、PR活動をする人もいるようです。

また、一方の住居を使っていない間、友人知人に貸し出したり、賃貸物件・レンタルスペースとして運営したりする人もいます。

デュアルライフをきっかけに、新しい収入源やビジネスチャンスをつかめる可能性もあるのです。

週末起業として、その地域の課題解決を目的として会社を興し、デュアルライフを送っている人もいます。

一方の拠点を事務所として使うことも可

フリーランスや会社経営者であれば、デュアルライフの拠点の一方を事務所として利用することもできます。家賃やオフィス家具、家電から交通費まで経費として精算できるものもあるので、どちらかを事務所にする場合は会計士や税理士に相談してみましょう。

 

デュアルライフのデメリット

いいことずくめのようなデュアルライフですが、いくつか気を付けておきたいポイントもあります。

・交通費がかかる

・移動時間がかかる

・物件の費用や維持費が2倍かかる

交通費が発生する

当然ですが、デュアルライフとして二拠点で生活するためには、二拠点間を移動するための交通費が発生します。

特に、海外拠点でデュアルライフを送るには、一ヶ月に何回程度往復するか試算しておくのがよいかもしれません

マイレージプログラムや割引運賃の適用、経由地の変更などで交通費を押さえられる場合もあります。

都心から1、2時間程度の距離であれば、移動の道中をいっそドライブやツーリング、サイクリングとして楽しんでしまうという方法もあるかもしれません。

移動時間がかかる

あまりに移動に時間をとられてしまうと、仕事やプライベートに使える時間が減ってしまうので、ライトなデュアルライフを送る人の中には、二拠点間の移動時間を2時間程度に抑えていることが多いようです。

鉄道・飛行機・バスなどの公共交通機関を利用するのであれば、駅や空港から近い物件を選ぶのがよいでしょう。

最近は飛行機の中でもWi-Fiが使えることも増えてきましたが、場合によっては移動中の連絡がつきにくい旨を事前に通知しておいたほうがいい場合もあります。

物件の費用や維持費が2倍かかる

二拠点目の住居を探す際に最も重視する人が多いのは、維持費の問題です。

デュアルライフで2つの拠点に住むということは、物件を2つ維持する必要があるため、単純に計算すると家賃や維持費が2件分かかることになります。

一方の拠点を使わない間は貸し出すなどで運用する人もいますが、修理やメンテナンスまで考えて長期的に検討したほうがよさそうです。

 

デュアルライフ

<Photo by Natalya Zaritskaya on Unsplash

はじめてのデュアルライフには定期借家がおすすめ

デュアルライフに惹かれている人が多い一方で、デメリットを考えると二の足を踏んでしまう方も多いのではないでしょうか。そんな人たちにもおすすめできるのが、都心のマンスリー(ウィークリー)マンションやサービスアパートメントのような定期借家物件です。

賃貸のように敷金・礼金・紹介手数料といった巨額の初期費用がかからないうえ、1ヶ月単位で部屋を契約できるため、もう一つの拠点の事情に合わせて契約できます。家具や家電があらかじめ備え付けられた物件も多く、引越しをするにも身軽です。

地方や海外に拠点を持ちつつも、東京に仕事や家族の予定で帰らなければならないとしたら、都度ホテルを借りるのは高くつくので、ある程度の期間に住むのであれば、定期借家を借りるという選択も悪くないでしょう。

関連情報:定期借家契約とは?定期借家に住むメリット・デメリット

まとめ

オフを満喫できる、新しいつながりができる、都心ではできない体験ができる、など、魅力がいっぱいのデュアルライフ。時間や費用の負担を考えても、一度は試してみたいと思う人もいるのではないでしょうか。

地方や海外に拠点を移すか迷っている方や新しい拠点の物件をゆっくり探したいという方、住んでみてから考えたいという方は、都内のマンスリーマンションやサービスアパートメントを、デュアルライフのひとつの拠点にしてみてはいかがでしょうか。

次回は、東京を拠点に海外でデュアルライフを送る人に焦点を当てて、見ていきたいと思います。